本研究会の創作教材教具をご紹介します。

 これらは、主として言語交流に困難のある(ピアジェの感覚運動期や前概念的思考期にいる)人々に対して提供されます。認知発達に合った工夫がなされ、特に、触覚が重視されます。私たちは、これらの創作教材を、対象者のスキルアップのためというよりも、コミュニケーションのための道具、言葉の代わりと考えています。これが本研究会の大きな特徴です。

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 発達の初期段階にいる方とコミュニケーションするためには、触覚受容(触り心地)に関心を向けることが大切です。本研究会における教材教具の開発と工夫は、「手を出したくなる」「操作したくなる」要素を重視して行われます。良い音、滑らかな触り心地、「ぴったりはまる」感覚などが操作する人々に明確に伝わるように工夫します。たとえば、棒さしにおいては、しばしば穴の中に磁石を埋め込み、棒をさした瞬間にカチッとした感触がフィードバックされるようになっています。

 私たちは、教材選びにおいても、心地よいコミュニケーションを第一に考えます。もし、提示した教材にその人が興味をもったら、自然に手を出して触るでしょう。適切な教材を選べば、言語的な教示はほとんど必要ありません。

心地よいコミュニケーションのために

心地よいコミュニケーションのためには、いくつかのルールがあります。

1.学習者ができる課題から始めます。学習を強要しないようにします。

2.チラリと見たもの、触れたものを選びます。もし拒否したら、即座に課題(教材)を変えましょう。

3. 提示の空間(広さや高さ)にも気を配ります。初期の認知空間は、大人よりもずっと狭いものです。

4.手をとって手伝うことや言語による教示はできるだけ避けて、その人のやり方を尊重します。その人のしぐさを見ていれば、自ずと適切な方法がわかります。

5.支援者が「できた!」と思ったときではなく、その人が「できた!」と思って支援者の方を見た瞬間を捉えて褒めます。

【解説】東京福祉大学 立松英子